【研究目的】糖尿病性神経障害の新しい治療法として、神経細胞内で長期間安定した遺伝子発現を可能とする脊髄後根神経節(DRG)ニューロン特異的なファージベクターの作成を試みる。 【研究実施計画】(1)New England Biolabs社製Ph.D.C7C Phage Display Peptide Libraryを用いて、DRGに特異的に接着する7桁ペプチドを採取し、この配列をphage vector pIIIサイトに付加し、DRG特異的に接着できるベクターを作成する。(2)マウスよりEPOおよびNGFなど糖尿病性神経障害に有効とされる成長因子のRNAを抽出し、RT-PCRによりcDNAを作成し、これにプロモータならびにpolyAを接着して発現遺伝子システムを作製し、ファージベクターに組み込む。STZ糖尿病マウスを用いて、糖尿病性神経障害対する治療効果を検討する。また、同時に、神経障害製のサイトカインであるTNFαの発現抑制をねらって、RNAiを用いたノックダウンも試みる。 【研究成果(内容、意義、重要性)】(1)Phage Display Peptide Libraryを用いたin vitroバイオパンニングにより、87種類のDRGニューロンに親和性を有するペプチド配列を抽出した。この配列のうち3種類を用いて、DRGニューロンに対する親和性をin vitroならびにin vivoで検討し、有用性を明らかにした。次に、ファージベクターの作製を行い、緑色蛍光色素(GFP)を発現する遺伝子配列をこれらのベクターに組み込み、in vivoにて、遺伝子発現の効率を観察している(現在継続中)。(2)EPO、NGFならびにTNFαのRNAiを用いて、発現システムを作り上げた。ベクター作製の完成までには今しばらくの努力が必要であるが、これらの結果は以上骨髄細胞ならびに病的神経細胞を標的とする遺伝子治療を計画することが可能であることを意味しており、現在開発を進めている。
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