研究課題
基盤研究(C)
皮質下血管性認知症の責任病変である虚血性白質病変の病理機序を解明する目的で以下の検討を行った。ラット慢性脳低灌流モデルを2群に分け、それぞれvehicleまたは非選択的マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)阻害剤(ilomastat)を連日腹腔内投与した。術後3-30日後に脳を灌流固定して視神経交叉のレベルで2分割し、前半のブロックをパラフィン包埋、後半のブロックを凍結しクリオスタット切片とした。慢性低灌流30日後にilomastat投与群のMMP-2およびMMP-9の活性を測定用キット(Biotrak Activity Assay System、Amersham Bioscience)で測定し、MMPs活性の抑制を確認した。いっぽう、MMP-2遺伝子のexon1を含む5.9kbフラグメントをpgk-neo遺伝子で置換したMMP2ノックアウトマウスを用いて慢性脳低灌流の影響を調べた。MMP-2ノックアウトマウスと野生型マウスの両群で、それぞれ4ヶ月齢で偽手術と慢性脳低灌流負荷を行った。ラットのilomastat投与群、MMP2ノックアウトマウスは、それぞれの対照群に比較してミエリン染色で認められる虚血性白質病変の程度が有意に抑制されていた。また、ミクログリアのマーカーであるMHC class I,II抗原、アストログリアのマーカーであるGFAPの各陽性細胞の密度も減少した。Type IV collagenをはじめとする血管基底膜の構成成分がMMPsによって分解されることから、慢性低灌流負荷後のMMP-2、MMP-9活性の変化をzymographyで測定した。MMP-2ノックアウトマウスではMMP-2は誘導されずMMP-9の代償的亢進も認めなかったが、野生型マウスでは慢性脳低灌流負荷でMMP-2活性の亢進が見られた。以上より慢性脳低灌流により生じるグリアの異常活性化および虚血性白質病変がMMP-2の阻害によって抑制されること、その機序としてMMP-2による基底膜の障害と血液脳関門障害が関与する可能性が示された。次年度の課題として血液脳関門の評価を行う予定である。
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