我々は、グルコルチコイドによるミトコンドリア障害の機序について研究を進めた。その結果、グルココルチコイド長期投与で骨格筋のミトコンドリア機能障害をきたすこと、その障害には活性酸素の過剰産生が密接に関係すること、さらにその作用は活性化されたグルココルチコイド受容体を介したものであることが考えられた。このことからグルココルチコイド受容体に結合し、ミトコンドリアへと誘導する蛋白の存在が推定された。本研究ではグルココルチコイド受容体結合蛋白の候補を、yeast two-hybridシステムを用いて、cDNAライブラリーからスクリーニングした。1次スクリーニンクにより得られた候補について、ミトコンドリア移行シグナルの有無を検索した結果、このシグナルを有すると思われる10個の遺伝子が得られた。次に、哺乳類由来の培養細胞において、グルココルチコイド受容体との結合性の有無を検討した。すなわち、これらの遺伝子をreporterベクターに挿入し、グルココルチコイド受容体とともにCOS-1細胞に共発現させたうえで免疫沈降法を行った。その結果、グルココルチコイド受容体と結合する、1つの新規の蛋白が同定された。さらにGFPベクターに挿入し、これを培養細胞で発現させたところ、この蛋白はミトコンドリアに選択的なプローブに一致した蛍光が検出された。以上の成績より、この新規の蛋白はともに、目的とするグルココルチコイド受容体結合である可能性は高いと考えられた。次年度は、この新規の遺伝子の機能をさらに掘り下げて、以下の研究を行う予定である。1)Import study:我々の見出した新規蛋白がin vitroにおいてミトコンドリアへの移行能を有するか否かを検討する。2)グルココルチコイド受容体の細胞内局在の解析。3)in vitro transcription:グルココルチコイド受容体および新規蛋白がミトコンドリアの転写因子として機能するか否かを、in vitro transcription法で検討する。
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