我々は、グルコルチコイドによるミトコンドリア障害の機序について研究を進める過程で、グルココルチコイド長期投与で骨格筋のミトコンドリア機能障害をきたすこと、その障害には活性酸素の過剰産生が密接に関係することを見出した。さらにその作用はグルココルチコイドによるミトコンドリアに対する直接的作用であると考えられたことから、本研究ではこれらの点をさらに明らかにするために立案され、興味深い結果が得られた。我々は、種々の培養細胞において、ミトコンドリア膜電位(ΔΨm)の上の副腎皮質ステロイド、反応酸素種(ROS)の生成とアポトーシスの影響を分析した。分化した細胞では、デキサメタゾン添加は、ΔΨmの低下とともに、ROS生成とアポトーシスを増加させた。これらの変化はSODの存在下では見られなかった。増殖期の細胞では、デキサメタゾンはΔΨmの増大とともに、ROS生成とアポトーシスを増加させた。SODの存在下ではROS産生とアポトーシスの増加は消失したが、ΔΨmの増大は変化しなかった。以上の結果より、グルココルチコイド受容体はグルココルチコイドにより活性化された後には、細胞内のミトコンドリアに移行する可能性が考えられた。本来、活性化されたグルココルチコイド受容体は核内に移行することが広く認識されてきたものの、我々の成績はミトコンドリアへと誘導する蛋白の存在を示唆するものであった。 次に、活性化されたグルココルチコイド受容体がミトコンドリアに移行するか否かを検討するため、培養細胞(COS、RD)にグルココルチコイド受容体のGFP蛋白を導入し、デキサメタゾン(1×10^<-6>〜×10^<-7>M)を添加した。その結果、核とともに、ミトコンドリアに一致してGFPシグナルの一部が観察された。このことより、グルココルチコイド受容体をミトコンドリアまで運搬する蛋白の存在が強く示唆された。
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