研究課題
基盤研究(C)
アルツハイマー病(AD)の病態機序として、細胞外蓄積アミロイドβ蛋白(Aβ)によるアミロイドカスケード仮説が知られている。一方で、神経細胞内に蓄積するAβによる神経毒性の重要性が近年提唱されており、我々は最近、細胞内蓄積Aβの分解を促進する薬剤として塩酸アポモルフィン(APO)を見出し、ADの治療・進行防止薬として特許出願を行った。また、H_2O_2添加によるアポトーシス誘導系で細胞生存率の著明な改善が見られ、APOはADの神経細胞死を抑止する治療薬候補と考えられた。また、APOの細胞保護効果はH_2O_2添加の酸化ストレス誘導に対して強力であり、細胞内グルタチオンペルオキシダーゼ活性上昇作用があることを明らかにした。我々はさらに、ADの動物モデルにおいてAPOの治療的効果を検討した。家族性ADの2つの原因遺伝子(APP・PS1)と神経原性変化(NFT)タウ蛋白の遺伝子変異を有する3XTgマウス(APP-KM670/671NL,Tau-P301L,PS1-M146V)では、4ヶ月齢で海馬や大脳皮質の神経細胞にAβ42が蓄積、短期記憶が障害され、NFT類似のリン酸化タウ蓄積が見られる。6ヶ月齢の3XTgマウスにおいて、AP0 5mg/kg週1回皮下注射を1ヶ月間行った所、モリス水迷路解析で記憶機能の改善を認めた。さらに、非注射マウスと比較して、海馬や大脳皮質の神経細胞内のAβおよびリン酸化タウ蛋白の蓄積が軽減していた。以上より、APOは培養細胞における細胞内Aβ分解促進作用や抗アポトーシス作用だけでなく、ADモデルマウスにおいても認知機能および病理学的な改善効果があり、AD患者における有力な治療薬候補であることをあきらかにした。
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