研究課題
[目的]重症筋無力症(以下MG)患者の約20%では血清抗アセチルコリン受容体抗体(以下抗AChR抗体)が検出されず、sero-negative MGとしてその病態機序の解明が進められている。筋特異的チロシンキナーゼ(MuSK)自己抗体を有する患者の運動終板では、運動終板後膜のシナプス密度は保たれ、終板面積が狭小小していることを報告した。ヒト抗MuSK抗体がラットの運動終板形成に及ぼす影響に関して、ヒトと類似しているかを検討した。[対象・方法]ルイスラットのひらめ筋に塩酸ブピバカイン0.5mlを投与し、壊死、再生を生じさせた。ヒト抗MuSK抗体を有する患者のIgGを抽出し、ラットに投与した。コントロールとして、ヒトIgGを使用した。4週目にひらめ筋を剔出し、一部を凍結切片に、一部を3%グルタールに固定し、運動終板を観察した。[結果]抗MuSK抗体陽性IgGでは、バンガロトキシンでラベルした運動終板の受容体の減少は観察されず、補体の沈着もなかった。微細構造の変化では終板面積は減少し、postsynaptic membrane 密度は保たれていた。[結論]ヒト抗MuSK自己抗体は、ラットにおいてもヒト運動終板と類似の変化をもたらした。また、誘発筋電図でWaningを呈し、抗AChR抗体陰性、抗MuSK抗体陰性の患者のなかには筋萎縮性側索硬化症などの運動ニューロン疾患が認められた。他の症例の運動終板は一定の微細構造所見を呈していない。症例によっては補体の沈着が運動終板に認められる例もあるが、補体の沈着がなく、電子顕微鏡の写真の計測で神経終末と後シナプスのフォールドの長さの比が短い例などの症例が存在する。運動終板の形態変化から推測すると同一の病態では無い可能性がある。
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