本年度は、まず、spastinのlong formとshort formを認識する抗体を用いて、spastinの局在について解析した。その結果、longformは分裂期の紡錘体微小管に、short formは細胞質分裂時の細胞間橋に局在して、微小管の切断に関与することを見い出した。次に、knock-down率の異なる合成siRNAを用いて、spastinの発現量が細胞に及ぼす影響について、分裂系細胞(HeLa細胞)と神経系細胞(IMR32とSHSY5Y細胞)を用いて解析した。HeLa細胞では、spastinのsiRNA導入により、細胞周期がGO/Glで停止している細胞が多く認められ、細胞死が観察された。神経系の細胞においてknock-down効率の低いsiRNAを導入した細胞では、微小管が束になった太い突起が認められたが、さらにspastinを減少させると突起先端部で成長円錐の形成が不十分な細胞と太さが一定ではない異常伸長した突起の形成も観察された。突起形成に影響する化合物のスクリーニング系については、knock-down効率が中程度のsiRNA配列を選択し、その濃度は細胞死への影響が少なく、突起形成の異常が認められる1nMとした。この系を用いて、まず、微小管関連物質であるビンプラスチンの評価を行った。HeLaおよびSHSY5Y細胞においてspastinのsiRNA導入後にビンブラスチンを添加し、形態の異常と突起の伸長を観察したところ、5nM-10nMの濃度では突起の異常伸長を軽減したが、細胞死も誘導された。今後、さらに突起形成に特異的に関与する化合物を探索する予定である。加えて、DNAchipを用いた解析によりspastin遺伝子の減少に伴い減少する遺伝子群から、神経突起形成に関与する遺伝子を解析した。その結果、この蛋白は、内在spastinと神経突起の先端で共局在したが、spastinのknock-downによって突起先端部への集積は阻害された。今後、spastin関連蛋白や微小管との関連を検討することにより、SPG4の病態解明と軸索再生への手がかりが得られると思われる。
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