研究概要 |
今年度は、1)突起形成に影響する物質のスクリーニング、2)突起の伸長に関与する蛋白とspastinとの相互作用についての解析を行なった。 1)スクリーングの化合物として微小管重合阻害剤およびアルキルフェノール系化合物を用いた。IMR32にspastinのsiRNAを導入し、脆弱な突起を過形成するspastinの発現低下細胞を用いて、突起の異常伸長ならびに突起の脆弱性を軽減させる花合物をスクリーニングしたところ、ビンブラスチンおよびポリフェノールの一種であるプルプロガリンは突起の異常伸長を軽減したが細胞死も誘導した。 2)DNAチップにより解析したspastin関連遺伝子群の中から、突起の形成と微小管の安定性に関与し、アポトーシスにも関与する遺伝子が、spastinの減少に伴い減少することを見いだした。さらに抗体を用いた解析により、このタンパクは内在のspastinと神経突起の先端で共局在すること、spastin抗体を用いた免疫共沈降によりこのタンパクが共沈降してくることが判明した。このタンパクは細胞内、特に神経突起の先端部分でspastinと複合体を形成し、突起の伸長に関与していることが強く示唆された。さらに,DNAチップによる解析ではspastin遺伝子の減少に伴ってSPG7の原因遺伝子であるparapleginが減少していることが判明した。Parapleginはspastinと同様にAAAファミリータンパクであり、ミトコンドリアに局在するメタロプロテアーゼであるが、最近、spastinとpalapleginとの相互作用が報告されている。これらのことから、spastinと関連タンパク間のネットワークの解明は、軸索の伸長と維持の機序、さらにはSPG4をはじめとする痙性対麻痺の治療法の開発に結びつく可能性が考えられた。
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