研究概要 |
家族性パーキンソン病に、共通した黒質神経変性カスケードが存在しているとする仮説に基づき、alpha-synuclein、parkinのlipid raftsへの特徴的な細胞内局在パターンに着目し、蛋白解析を行うことにより、より効率的かつ特異的に黒質神経変性の原因を明らかにできる可能性が高いと考えた。またlipid raftsに注目した研究成果はほとんど報告されておらず、早急に研究を推進する必要があり、成果が得られれば極めて独創性の高い研究となることは間違いないと考えた。家族性パーキンソン病に、もしlipid raftsを介した共通の変性機序が存在すれば、孤発性パーキンソン病の黒質神経細胞死の機序解明へ発展でき、さらには新薬の開発につながる可能性があると考え、我々はPARK8にマップされた家族性パーキンソン病の原因遺伝子であるLeueine-rich repeat kinase 2(LRRK2)のコードするLRRK2タンパクに着目した。LRRK2タンパクに対するrabbit polyclonal抗体、LRRK2発現ベクターを作製し、これらを用いてCOS細胞、HeLa細胞、マウス神経初代培養細胞において細胞内局在を検討した。LRRK2タンパクはゴルジ体、細胞膜、シナプス小胞に局在した。さらにLRRK2タンパクの染色性はlipid raft markerと共局在した。次に生化学的にlipid raftsへの結合を示すためにマウス脳を用いてショ糖密度勾配法を行い、LRRK2タンパクがlipid rafts分画へ回収されることを明らかにした。さらにLRRK2変異により発症した家族性パーキンソン病患者に認められた変異LRRK2について、上記と同様にそれらの局在を検討したところ、野生型との相違はなく、lipid raftsへの結合能も保たれていた。これらの結果より、変異LRRK2はlipid raftsで野生型LRRK2の機能を阻害することによりパーキンソン病を発症させる可能性が示唆された(Hatano T, Kubo SI, Imai S, Maeda M, Ishikawa K, Mizuno Y, Hattori N. Leucine-rich repeat kinase 2 associates with lipid rafts. Hum Mol Genet, 2007)。
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