研究概要 |
遺伝性パーキンソン病の原因タンパクの異常が黒質神経細胞死という共通の結果につながることは確かであるが、その変性過程にこれらのタンパクがどのように関わっているのか、また各々の遺伝子産物の詳細な細胞内局在に関する情報はほとんどない。近年、遺伝性パーキンソン病の原因タンパクであるα-synucleinとparkinがシグナル伝達、膜タンパクソーティングなど細胞の重要な働きを担う細胞膜のmicrodomainであるlipid raftsに結合すると報告された。さらに我々は平成18年度の研究でLRRK2もlipid raftsに結合することを報告した。そこで遺伝性パーキンソン病の原因タンパクとlipid raftsの相互作用が変性機序を解明する上で重要であると考え、この点を明らかにするために、まず常染色体劣性パーキンソン病の原因タンパクのひとつであるPINK1を培養細胞に発現させ、細胞免疫染色および生化学的解析から同タンパクに一部は膜に局在し、界面活性剤不溶性画分に回収されることを確認した。さらにPINK1とparkinを培養細胞に共発現させ、免疫沈降法, fluorescent resonance energy transferを用いてこれらタンパクの結合を明らかとした。また、この相互作用によりparkinがPINK1を安定化することを解明し、実際にparkinノックアウトマウスの脳ではPINK1の発現が低下していることを示し、現在論文投稿中である。また、もうひとつの常染色体劣性パーキンソン病の原因タンパクであるDJ-1についてもその細胞内局在を培養細胞およびマウス脳を用いて詳細に検討し、同タンパクがシナプトソームの膜成分に結合することを見出した。シナプスの機能と関連している可能性が考えられ興味深い結果である。今後モデル動物を用いこの点をさらに検討する。
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