実験的には骨髄間葉系幹細胞投与による脳梗塞体積縮小効果はよく知られているが、骨髄間葉系幹細胞を得るためには一定の培養期間が必要であるため脳梗塞急性期治療への臨床応用は困難である。今回の研究では、臨床応用の観点から培養および移植に伴う拒絶反応の問題を考慮する必要のない自己骨髄単核球細胞投与に注目し、ラット一過性局所脳虚血モデル(90分)における自己骨髄単核球細胞投与の梗塞体積縮小効果の投与経路による違いについて検討した。大腿骨髄から採取した自己骨髄単核球細胞(1×10^7)を虚血再灌流直後に経静脈的あるいは経総頚動脈的に投与、再灌流24時間後に脳を摘出しTTC染色にて梗塞体積を測定したところ、経総頚動脈的投与群においてのみ梗塞体積の縮小効果を認めた。またPKH26で標識した自己骨髄単核球細胞投与による検討では、標識細胞数は経総頚動脈的投与群において経静脈的投与群と比較して有意に多く、虚血部位に到達する骨髄細胞量により脳保護効果が規定されることが示唆された。 次に移植された細胞の生着と分化について検討するため、ラット一過性局所脳虚血モデル(90分)を用い、GFPラット由来骨髄間葉系幹細胞を経静脈的に投与し、1日後から2ヶ月後の間に摘出した脳における移植細胞集積状態と生着を蛍光顕微鏡で観察した。ペナンブラ領域に著明なGFPラット由来細胞の集積を認めたが、経時的に移植細胞数は減少した。免疫組織化学的検討において、移植細胞の一部はdoublecortin陽性の幼弱神経細胞、その後NeuN陽性の成熟神経細胞に分化していた。急性期移植後の骨髄間葉系幹細胞の生着率は経時的に減少するが、少なくとも一部は神経細胞への分化が認められる。したがって、生着や分化を促進する薬剤や栄養因子等を併用することで治療への応用が期待できると思われた。
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