研究概要 |
ヘルペス脳炎ではウイルス直接侵襲だけでなく二次的免疫機序の関与により組織障害が増悪する。ヘルペス脳炎の髄液中ケモカイン,酸化ストレスマーカーとして8-OHdGを測定し他疾患と比較,重症度との相関,予後との関連について検討した。対象はヘルペス脳炎(HSE)4例,非ヘルペス性辺縁系脳炎(NHLE)4例,多発性硬化症(MS)16例,急性散在性脳脊髄炎(ADEM)4例,非炎症性神経疾患(NIND)10例。-80℃保存髄液を用いてELISAキットでIL-8,MIP-1α,RANTES, MCP-1,IP-10,sTNF-R1,8-OHdGを測定した。IL-8とRANTESはNHLEとHSEが最も高値で,次いでMSとADEMとなりNIMDが最も低値であった(NHLE・HSE>MS・ADEM>NIND)。MIP-1αはNHLEとHSEがNINDより高値を示したがMS, ADEMと同等(NHLE・HSE=MS・ADEM>NIND)。MCP-1はNINDに比しNHLEとHSEで高値を示したが,MSとADEMではNINDより低下した(NHLE・HSE>NIND>MS・ADEM)。ヘルペス脳炎の経過との関連を検討したところ,IP-10,IL-8,MCP-1値は病態の改善とともに低下した。病態に関わる免疫機序(細胞性・液性免疫のバランスなど)により作用するケモカインが大きく異なると考えられた。
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