研究概要 |
筋ジストロフィーの責任遺伝子産物であるディスフェルリンの結合タンパク質として同定した、アフィキシンの骨格筋における生物学的役割を解明するため、ヒトアフィキシンを恒常的に発現するマウス筋芽細胞のライン(C2C12-affixin)を確立した。 C2C12-affixinはラメリポディア(波打ち膜)を高頻度で形成し、アクチン細胞骨格系の再構成が活発に行われていた。ラメリポディアにはアフィキシン・ディスフェルリンだけでなくαPIX,βPIXが集積していた。PIXはRho GTPaseを活性化するグアニンヌクレオチド交換因子であり、申請者らはアフィキシンとαPIXの相互作用を既に報告している。今回アフィキシンとβPIXの相互作用を見出し両者の結合ドメインを同定した。アクチン細胞骨格の再構成が活発なC2C12-affixinではRho GTPaseの活性化が予想されるが、C2C12-affixinではRac1が活性化していた。さらにドミナントネガティブ型のαPIXまたはβPIXをC2C12-affixinに導入したところ、ラメリポディアの形成が阻害された。これらの結果から筋芽細胞においてアフィキシンはαPIX,βPIXの双方を介してRac1を活性化し、アクチン細胞骨格系の再構成を行うと考えられる。細胞骨格系の再構成は細胞膜の修復過程でも観察され、ディスフェルリンは筋細胞膜修復への関与が報告されていることから、アフィキシンも筋細胞膜の修復に関与することが予測される。
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