脳梗塞の超急性期治療の有効性が示されている今、脳障害の有無をいち早く判定し、さらなる検査の必要性を見極め、さらに治療効果の有無を客観的な数値の変化として示す事ができるシステムがあれば便利である。本年度は、1)脳障害により血液へ漏出するタンパク質を検出する方法の開発 2)脳障害動物モデルを用いた、作成した血液診断システムの有効性の検証 3)臨床材料を用いた、作成した血液診断システムの有効性の検証のうち1および2の一部を行い達成できた。 1)血液中タウタンパク質検出系の作成 タウタンパク質N末端1-150までを認識するモノクロナール抗体の詳しいエピトープの解析 すでに作成してあるタウタンパク質N末端1-150までを認識するモノクロナール抗体18種類が、ヒトタウタンパク質のどの領域を認識するか、大腸菌に発現させたヒトタウタンパク質の断片を用いて解析した。解析によりタウタンパクExon1、Exon2、あるいはExon3にコードされるタンパクを認識するモノクロナール抗体が得られたことが判明したため、Exon4-5境界に相当する領域のペプチドを認識するポリクロナール抗体を組み合わせたELISA系を作成し、リコンビナントのヒトタウタンパク質をコントロールとして用いて定量的に測定できよう条件の最適化を行った。 2)脳障害動物モデルにおけるヒトタウ断片検出ELISA系の有用性の検討 ヒトタウタンパク質を発現するトランスジェニックマウスの凍結ダメージ脳を用いた検討 ヒトタウタンパク質を脳で発現するトランスジェニックマウスにドライアイスを用いて小さな凍結脳障害を与えて、経時的にサンプリングした血液を用いて、上記のELISA系で血中タウタンパク値の測定を試みた。凍結ダメージ脳を作成する系を用いて、脳ダメージのサイズと血中タウ値との相関があることがわかった。
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