脳梗塞の超急性期治療の有効性が示されている今、脳障害の有無をいち早く判定し、さらなる検査の必要性を見極め、さらに治療効果の有無を客観的な数値の変化として示す事ができるシステムがあれば便利である。本研究は[項目1]脳障害により血液へ漏出するタンパク質を検出する方法の開発、[項目2]脳障害動物モデルを用いた、作成した血液診断システムの有効性の検証、[項目3]臨床材料を用いた、作成した血液診断システムの有効性の検証の大きく3段階からなる。昨年度作成に成功した項目1に基づいて本年度は項目2および項目3を行い、項目2を達成することができた。項目3については、多数の臨床検体を用いて、調べる必要があるため現在維続中である。 項目2.脳障害動物モデルにおけるヒトタウ断片検出ELISA系の有用性の検討ヒトタウタンパク質を発現するトラノスジェニックマウスの凍結ダメージ脳を用いた検討:ヒトタウタンパク質を脳で発現するトランスジェニックマウスにドライアイスを用いて小さな凍結脳障害を与えて、経時的にサンプリングした血液を用いて、上記のELISA系で血中タウタンパク値の測定を試みた。凍結ダメージ脳を作成する系を用いて、脳ダメージのサイズと血中タウ値との相関があることがわかった。 [項目3]臨床材料を用いた、作成した血液診断システムの有効性の検証 大学の倫理委員会にて審査承認を経てinformed consentが得られた急性脳障害患者の血液サンプルを用いて血中タウ値が測定できるか、さらに経時的変化はどのようであるか検討を試みた。プレリミナリーな結果では、脳梗塞例で急性期に血中タウ測定用ELISAで陽性となる例があること、一方正常対象例では検出感度以下であることがわかった。現在多数例を用いて、詳細な検討を加えている。
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