研究課題
基盤研究(C)
コレステロール逆輸送と独立した高密度リポ蛋白質(HDL)の抗動脈硬化作用の一部がHDL中に高濃度に蓄積されたスフィンゴシン1-リン酸(S1P)により媒介されることを報告して来た。本研究はこの研究の延長線上にある。本研究ではHDLによる血管内皮細胞の接着分子発現抑制作用のメカニズムを解析した。S1Pは腫瘍壊死因子(TNF)による血管内皮細胞の接着分子(ICAM-I、VCAM-I)の発現促進作用を阻害した。S1Pは一酸化窒素(NO)合成を介してTNFによる接着分子発現促進作用を阻害した。S1P容体サブタイプのS1P1とS1P3のアンチセンスオリゴヌクレオチド及びsiRNA を細胞に導入してS1Pによる接着分子発現阻害作用を解析した。NO合成促進作用はS1P1、S1P3両方を介していた。このNO合成促進作用は百日咳毒素(PTX)処理で完全に抑制された。よってS1PによるNO合成促進作用はS1P/S1P1、S1P3/Giを介していると考えられた。一方、S1P3はNO合成促進作用に加え弱い接着分子発現促進作用が認められた。実際S1Pは1μMから3μMで接着分子発現促進作用を示したがTNFによる作用に比べ弱いものであった。S1P/S1P3を介する接着分子発現作用はPTX処理で完全に消失した。S1P3はGiとともにG12、G13とも連関しているためG12、G13に対するsiRNAを細胞内に導入しこれらの受容体連関G蛋白質の発現を阻害するとそれぞれの発現阻害で50%程度の接着分子発現作用が抑制され、G12、G13両方の発現阻害でほぼ完全に接着分子発現作用が消失した。以上のことからS1Pはその特異的受容体S1P1、S1P3を介してNO合成を促進することでTNFによる接着分子発現促進作用を抑制するが、S1P単独では高濃度のS1PによりS1P3/Gi/G12、G13を介して弱く接着分子発現を促進すると考えられる。
すべて 2006
すべて 雑誌論文 (2件)
J Biol Chem. 281・49
ページ: 37457-37467
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