(目的)近年、私達は酵母ツーハイブリッド法にてPPARγのDNA結合領域に結合する新規蛋白PDIP1の単離に成功し、培養細胞系にてPDIP1がPPAR familyの活性型転写共役因子として機能することを報告した。本研究では、生体内におけるPDIP1の機能解析を行う目的でノックアウト(KO)マウスを作成し、その糖・脂質代謝異常の有無について解析を行った。(結果)マウスPDIP1遺伝子のexon1〜6をネオマイシンカセットで置換するターゲッティングベクターを構築し、相同組み換え法を用いてPDIP1KOマウスを樹立した。サザン解析およびノーザン解析にてPDIP1遺伝子発現の消失を確認した。各ゲノタイプの出生率はメンデルの法則に従っていた。通常餌下でホモマウスは軽度のやせ傾向を示したが、IPGTTおよびITTでは野生型と有意差を認めなかった。血清脂質解析では、ホモマウスにおいてTG、VLDL-Cho1、LDL-Cholの有意な低下を認めた。組織学的にホモマウスで褐色脂肪組織(BAT)の発達不良を認め、定量的RT-PCRにてPPARγ、UCP1、aP2 mRNA発現が低下していた。一方、白色脂肪組織(WAT)ならびに肝臓では脂肪酸酸化に関与する遺伝子群の発現が有意に増加していた。更に、高脂肪食負荷にてPDIP1KOマウスは野生型に比し有意なやせを呈し、良好な耐糖能を示した。 (結語)KOマウス解析からPDIP1がBATの分化あるいは発達に重要な役割を果たす事が示唆された。ホモマウスのTG低下と肥満抵抗性は、WATおよび肝臓における脂肪酸酸化系の代償的亢進が関与する可能性が示唆された。
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