研究概要 |
近年、私達は酵母two-hybrid法にてPPARγに結合する新規蛋白PDIPlの単離に成功し、PDIPlが培養細胞系においてPPAR familyの転写活性型共役因子として機能することを報告した (Endocrinology,2006)。更に生体内におけるPDIP1の役割を解析する目的でPDIP1ノックアウト(KO)マウスを樹立し,KOマウスが通常食(ND)下で低TG血症(野生型の約50%)を呈することを報告した。19年度研究ではKOマウスに高脂肪食(HFD)負荷を行い,この低TG血症発症の分子病態解析を更に進めた。(結果)HFD下においてホモKOマウスは摂餌量に有意差を認めなかったが,野生型マウスに比較して肥満抵抗性,脂肪肝抵抗性を呈し,有意に良好な耐糖能ならびにインスリン感受性を示した。血清脂質解析において,ND下同様にKOマウスは有意な低TG血症を呈し,皮下および内臓脂肪重量の減少と性腺周囲脂肪組織における大型脂肪細胞数の減少を認めた。NDならびHFD下ホモマウス肝臓において,脂肪酸合成系酵素発現の低下のみならず,脂肪酸β酸化に関与する遺伝子群の有意な発現増加を認めた。また性腺周囲脂肪組織において脂肪酸β酸化を元進するPPARαならびδ遺伝子発現が有意に増加していた。PDIP1 mRNA発現を認めない横紋筋では,これら遺伝子群発現に有意な変化を認めなかった。(考察)共役因子欠損によるPPARγ機能低下によって,肝TG合成低下ならびに肝臓,脂肪組織における脂肪酸β酸化の充進が惹起されてPDIP1KOマウスが肥満抵抗性を呈する事が示唆された。メタボリック症候群の病態において,PDIP1が肥満増悪性転写共役因子として機能する可能性が示唆された。
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