研究概要 |
本研究では、LOX-1の新規機能として、酸化LDLのみならず、レムナントリポ蛋白(RLP)の受容体としても作用している可能性につき検討した。RLPはヒト血漿から超遠心法で分離したカイロミクロン/VLDL分画を、RLPコレステロール測定の臨床検査で用いられている抗アポB-100抗体と抗アポA-1抗体のアフィニテイーゲルカラムにアプライし、カラムに結合しない分画として単離した。ヒトおよびウシLOX-1を安定に強発現するCHO-K1細胞は蛍光DiIで標識されたRLPを酸化LDLとほぼ同様に取り込み、100倍濃度の非標識RLPおよび酸化LDLの添加で抑制されることが、蛍光顕微鏡での観察および有機溶媒で抽出後の蛍光カウントで明らかとなった。さらに、LOX-1 siRNAを導入しLOX-1の発現を減少させることにより培養ウシ大動脈血管平滑筋細胞(BSMC)でのDiI-RLPの取り込みは有意に阻害された。また、RLPはBSMCにてBoydenチャンバーで観察される細胞遊走とウエスタンブロットおよびノザンプロットで評価されるLOX-1の発現を時間および濃度依存性に誘導した。これらは、全般的メタロプロテアーゼ阻害剤、HB-EGF中和剤、EGF受容体リン酸化阻害剤で有意に抑制された。さらにEGF受容体以下の細胞内情報伝達として、RLPによりMAPK,p38MAPK, Aktの活性化が確認されるとともに、これらの経路に対する特異的阻害剤にてRLPによる細胞遊走とLOX-1の発現誘導は抑制された。以上の結果より、LOX-1が血管平滑筋細胞でRLPの受容体として作用し細胞遊走を促進することで粥状動脈硬化の進展を促進する可能性が示唆された。
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