研究概要 |
1.転写因子KLF15の肥満での発現変動 遺伝的肥満モデルob/obマウスや高脂防食給餌肥満モデルマウスにおいて、KLF15の発現が著明に抑制されることを見出した。 2.脂肪細胞特異的KLF15トランスジェニックマウスの作出 脂肪細胞特異的に発現する脂肪酸結合たんぱく(aP2)のプロモータを用いて、脂肪細胞特異的にKLF15を発現するトランスジェニツクマウスを2ライン(Tg1およびTg3)作出した。2ラインとも他臓器にKLF15の発現は認めず、またTg1は内因性のKLF15と同等の発現を認め, Tg3は内因性のKLF15の約3倍の発現を認めた。 3.脂肪細胞特異的KLF15トランヌジェックマウスと解析 脂肪細胞特異的KLF15トランスジェニックマウスであるTg1およびTg3とも、通常食飼育下では、脂肪量に差を認めず、耐糖能も野生型マウスと同等であった。しかし著明な低アディポネクチン血症を認め、KLF遺伝子によるアディポネクチン発現制御機構の存在が推定された。 4.高脂肪食飼育下脂肪細胞特異的KLF15トランスジェニックマウスと解析 脂肪細胞特異的KLF15トランスジェニックマウスであるTg1およびTg3に高脂肪食を給餌したところ、野生型マウスに認められた肥満が著明に抑制され、良好な耐糖能を示した。 5.高脂肪食飼育下脂肪細胞特異的KLF15トランスジエニックマウスと遺伝的肥満モデルob/obマウスとの交配KLF15を発現するob/obマウスを作出したところ、過食による肥満誘導をKLF15が抑制することを見出した。 以上の結果より、KLF15は肥満を抑制する転写因子であることが判明した。 6.KLF15の抗肥満効果 KLF15の標的遺伝子として、不飽和脂肪酸を合成する酵素SCD1をマイクロアレイ解析により見出し、実際SCD1のプロモータ領域にKLF15が結合することを見出した。すなわちKLF15はSCD1の発現を介して脂肪酸合成を制御する転写因子であることが明らかとなった。
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