研究課題/領域番号 |
18590992
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
岩井 将 愛媛大学, 大学院・医学系研究科, 准教授 (00184854)
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研究分担者 |
堀内 正嗣 愛媛大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (40150338)
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キーワード | 脂肪細胞 / 分化 / アンジオテンシン / AT1受容体 / AT2受容体 / インスリン抵抗性 / 糖尿病 / 炎症反応 |
研究概要 |
本年度は脂肪細胞分化に対するアンジオテンシンII受容体サブタイプであるAT1及びAT2受容体の遺伝子欠損マウスを用いて、受容体サブタイプの役割をさらに検討した。 マウス脂肪組織分化、炎症反応に対するAT1・AT2受容体の役割:AT1受容体欠損ApoEKO (AT1/ApoEKO)マウスの白色脂肪組織においては、ApoEKOマウスにおいて低下したアディポネクチン・PPARγの発現が増加しており、C/EBPαとaP2の発現低下も回復した。その結果、ApoEKOマウスでは大型化していた脂肪細胞が有意に縮小していた。これに対してAT2受容体欠損のAT2/ApoEKOマウスでは脂肪細胞の小型化、アディポネクチン・PPARγの発現低下、C/EBPαとaP2の増加など、AT1受容体欠損マウスと逆の変化が認められた。これらの結果から、脂肪細胞の分化に対してAT1受容体とAT2受容体は互いに相反的に作用し、脂肪蓄積や動脈硬化性病変形成に関与することが判明した。 糖尿病モデルにおける脂肪組織の変化とAT1受容体ブロッキングの効果:2型糖尿病モデルマウスであるKK-Ayマウスは肥満と糖尿病を特徴とするが、これにAT1受容体プロッカーを投与すると、脂肪細胞の縮小に加えて脂肪分化マーカーの発現が増加した。これらの実験結果から、AT1受容体刺激をブロックすることにより脂肪細胞の分化促進とそれによる脂肪細胞の小細胞化が誘導されることが示唆される。これらのマウスでは、体重の伸びも抑制されていた。 以上の結果より、脂肪組織におけるAT1受容体刺激は、細胞分化を抑制し、大細胞化を引き起こし、脂肪蓄積やインスリン感受性の低下を引き起こすことが推測され、AT1受容体のブロックはこれらの変化の抑制薬として有効であることが示唆された。また、脂肪細胞にはAT2受容体も発現しており、この刺激はAT1受容体シグナルに拮抗する形で、脂肪蓄積とインスリン感受性低下を抑制すると考えられる。
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