本邦における成人発症1型糖尿病患者の頻度は小児期発症例と同程度といわれており、これまでの研究からその約3分の2が緩徐発症1型糖尿病と推測されている。また、抗グルタミン酸脱炭酸酵素(GAD65)抗体は、緩徐発症1型糖尿病患者におけるインスリン依存状態の予知マーカーといわれているが、その予知率は発症後5年で約65%であり、抗GAD65抗体陽性者の約3分の1は長期間に渡りインスリン治療を必要としていない。そこで本研究は、抗GAD65抗体のエピトープのファインマッピングにより、緩徐発症1型糖尿病患者のインスリン依存状態への進展を鋭敏に予知できるマーカーを同定して、その高感度予知法を開発し、進展阻止への応用を行うことを目的とし、検討をおこなっている。 【研究実績】 (1)GADのファージディスプレイライブラリーの作製とスクリーニング: ヒト膵島由来GAD65ペプチドをファージ表面へ発現させるランダムファージディスプレイライブラリーを作製し、10^9〜10^<10>pfU/mlのライブラリーを得た。そのライブラリーを用いて、健常人血清、インスリン依存状態に陥った緩徐発症1型糖尿病患者血清およびインスリン非依存状態の緩徐発症1型糖尿病患者血清に対する反応を比較検討した。その結果得られた合計400のファージクローンよりファージDNAを抽出し、ファージに組み込まれているGAD65 cDNAのシークエンス解析を行ない、各血清が認識するGAD65エピトープを明らかにした。 (2)抗GAD抗体エピトープ解析システムの構築: (1)で得られた情報を元に、緩徐発症1型糖尿病におけるインスリン依存への進行と関連があると考えられるGAD65エピトープを複数選択し、サンドウィッチELISA法により、各血清IgGの結合を検討している。今後、インスリン依存への進行に特異的なエピトープを同定し、マススクリーニングに適した測定系の確立を図る。
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