研究概要 |
アディポネクチン受容体以下のシグナルを解明することを目的として、以下の2つの手法を用いて実験を行った。1)PMF法(Peptide-Mass Finger print)を用いて、アディポネクチンシグナル下流の遺伝子の増減を検討したところ、マウス骨格筋において、アディポネクチン添加により約9倍のFerritin Heavy Chain (FHC)蛋白発現上昇を認めた。この上昇は、NFκBの阻害薬にて消失すること、並びに、FHC遺伝子の転写はNFκBの転写刺激を受けていることから、アディポネクチンは、アディポネクチン受容体を通じて、NFκBの転写を刺激し、最終的にFHC蛋白量を増幅させる働きがあることが明らかとなった。この現象は、アデノウイルスを用いたアディポネクチン過剰発現マウスにおける筋肉組織においても、FHCの発現増加が観察された。以上のことから、アディポネクチンによる骨格筋に対するシグナルは、最終的に酸化ストレス軽減の作用をもたらすことがわかり、現在、さらなる詳細な検討をしている。2)AMPKの上流に位置し、AMPKをリン酸化する働きのあるLKB1が、アディポネクチンシグナルによって活性化されることを見出した。さらに、LKB1の変異抑制型蛋白を過剰発現させた状況化において、アディポネクチンを作用させると、アディポネクチンによるAMPK活性化が消失することから、アディポネクチンからAMPKに至る過程において、LKB1の活性化が必須であることを証明した(BBRC,2006)。
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