研究概要 |
酸化LDL、糖化LDL及び小型化LDLは陰性荷電が増加する共通の特性がある。ヒト血漿LDLはキャピラリー等速電気泳動(capillary isotachophoresis, cITP)法により、2っ電気泳動移動度の異なる亜分画に分離される。移動度の遅いLDL亜分画(slow-migrating LDL, sLDL)は正常なLDLで、移動度の早いLDL亜分画(fast-migrating LDL, fLDL)は陰性荷電変性LDLである。このことは、LDLがマイルドに酸化される時に、sLDL亜分画はfLDL亜分画に変化することで証明された。前年度、私達は、fLDLは炎症マーカー及び動脈硬化性リボ蛋白RLP-C (Remnant-Like Particle-Cholesterol)と関係することを示した。最近、私達はLDLが中程度に酸化される場合にfLDL亜分画はより電気泳動移動度の早い分画に変化することを発見し、この新しい酸化LDL亜分画をvfLDL (very-fast-migrating LDL)と命名した。今年度は、vfLDLはヒト血漿リボ蛋白の亜分画として存在するか、脂質異常症患者で増加するか、fLDLとの関係、また、LDL受容体によって代謝されるかを検討した。 1) vfLDL亜分画は、ヒト血漿中の中性脂肪リッチリポ蛋白(TRL)亜分画の一つであるsTRL (slow-migrating LDL)と同じ電気泳動移動度を有する。そのため、従来全血漿を使うリボ蛋白分析法では、vfLDLの分析ができない。従って、TRL除去血漿(d>1.006 g/ml血漿)分画を分離する定量超遠心法を用い、vfLDL亜分画測定法を開発した。 2) 心臓病危険因子を有する高コレステロール血症患者において、vfLDL亜分画が存在し、トータルLDLで占める割合は約8%だった。また、vfLDLは、主にsmall, dense LDL分画に存在することも示した。 3) vfLDL亜分画値は、fLDL亜分画値との間に強い相関があり、両方ともLDLのサイズと負に相関し、TG値及びRLP-C濃度と正に相関した。また、Rosuvastatin投与により、vfLDLとfLDL亜分画値は、両方とも有意に低下した。このことは、vfLDLはfLDLと同様にLDL受容体によって代謝されることが示唆された。陰性荷電LDLと正常LDLとの代謝様式の違いはこれから検討する課題とした。
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