研究概要 |
本研究は1型糖尿病のβ細胞破壊の自然経過に影響を及ぼす遺伝因子をβ細胞機能についてのlongitudinastudyを通じて明らかにすることを目的とした。1型糖尿病患者266例と正常対照136例を対象とし、1型糖尿病患者では経時的に残存β細胞機能の評価を行った。発症様式により劇症、急性、緩徐進行型1型糖尿病に分類した。HLA-A,-DR,-DQalleleをPCR-RFLP法でタイピングした。A24(A*2402)、DQA1*03の両者を有する例はその他の例よりβ細胞の廃絶が早かった(p=0.0057)。DR9(DRB1^*0901)を有する例でも、有しない例に比べてβ細胞廃絶が早期であった(p=0.0093)。更に、A24,DQA1^*03,DR9を有する例はそれ以外の例に比して、より早期にβ細胞の廃絶が起った(p=0.0011)。劇症型を除くと、DR2を有する例は、有さない例(に比べβ細胞廃絶が起りにくかった(p=0.011)。A24とDQA1^*03を有する例、A24,DQA1^*03,DR9の三者を有する例は急性発症で緩徐進行型に比べ高率に存在した(68.5%vs.49.4%,P=O.0068,35.8%vs.12.6%p=0.0002)。Coxの比例ハザードモデルによる解析では、男性、発症年齢、インスリン開始までの期間、A24、DQAI^*03,DR9を有することが独立したβ細胞廃絶の危険因子であった。HLA-A24,-DQA1^*03,-DR9の集積は、1型糖尿病における急性発症と早期のβ細胞廃絶をもたらす。一方、HLA-DR2はβ細胞廃絶の抵抗因子である。
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