研究概要 |
1)肥満症・メタボリックシンドローム(MS)のヒト単球機能の検討: 肥満症・MSの血液からFicoll-Paque法により末梢血単核球分画を分離後、単球機能を正常者と比較検討した。 i)肥満症・MSでは正常者より単球中のTNF-α,IL-6,MCP-1などの炎症性サイトカインの遺伝子発現がreal-time PCR法にて亢進しており、MSの危険因子の重積度と関連していた。 ii)FACS法では、正常者と肥満症の単球特異的マーカー(CD14、CD36、CD68)の分布・活性に有意差はなかった。 iii)インスリン抵抗性改善薬:TZDsや高脂血症薬:エイコサペンタエン酸(EPA)の添加にて、MSの単球中のTNF-α、IL-6、MCP-1の発現低下が認められた。 2)ヒト肥満の単球機能に及ぼすTZDsとEPAの影響: 糖尿病にてTZDsによるアディポネクチンの上昇、高感度CRPやPWVの低下を報告したが(Diabetes Care, 2003)、今回MSにてEPA投与でもアディポネクチンの有意な上昇を認め(Arterioscler Thromb Vasc Biol. in revised, 2007)、超悪玉コレステロール:small dense LDL-Cの低下と伴に、炎症の改善を認めた(Diabetes Care. 30:144,2007)。この結果を基に、肥満症・MSにおけるTZDsやEPA投与3ヶ月前後の単球を分離し、TZDsやEPAによるMS単球中のTNF-α,IL-6の発現低下を少数例認めている。今後その他の単球特異的指標、エンドトキシン(LPS)刺激によるToll-like receptor (TLR)からNF-κB活性化・サイトカイン産生に至る細胞内情報伝達経路について、内臓脂肪・アディポサイトカインの影響、TZDsやEPAなどの効果を検討しその分子機序を明らかにする予定である。
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