研究概要 |
本研究では肥満・MetSにて(1)アディポサイトカイン分泌異常と単球機能の関連、(2)インスリン抵抗性改善薬の単球機能改善効果を検討し、脂肪単球連関の分子基盤の解明と有効な治療法の確立を目指した。 1)ヒト単球系培養細胞THP-1を用いた検討:ヒト単球系培養細胞THP-1の分化後、PPARリガンド;TZDs(Pioglitazone 6μM)の24時間投与により炎症性蛋白IL-6やMMP-9発現量が、EPA50μMの24時間投与にてCD14,TNFα,MCP-1,MMP-9やTLR4の発現量が有意に低下し、アディポネクチンが上昇した。 2)ヒト単球・Mψを用いた検討:肥満・糖尿病・MetSの血液からMACSまたはFicoll-Paque法により末梢血単核球分画を分離後、単球機能を比較検討した。i)肥満・MetSでは単球中TNF-α,IL-6,MCP-1の遺伝子発現がreal-time PCR法にて正常者より亢進しており、MetSの危険因子重積度と有意に関連した。ii)FACS法では、正常と肥満者の単球特異的マーカー(CD14)の分布・活性に有意差はなかったが、糖尿病にてCD14活性上昇、非活性化M2マクロファージ(Mψ)の有意な低下を認めた。Iii)TZDsの3ヶ月間投与により、単球中の炎症性サイトカインTNF-αやCD14活性の有意な改善を認めた。 3)肥満・MetSにおけるEPAの動脈硬化惹起性リポ蛋白や高感度CRPの改善効果を報告した(Diabetes Care 27:144,2007)。またヒト肥満・遺伝性肥満ob/obマウスにてEPAによる血中アディポネクチンの増加や脂肪組織の炎症性変化の抑制を認め報告した(ATVB27:1918,2007)。脂肪単球連関を検討する上で、血中アディポサイトカインと単球機能との関連を更に解析することは展開医療として重要である。
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