平成18年度の研究においては、まず卵胞成熟段階別におけるBMPの重要性を明.らかにするためSprague-Dawley(SD)雌ラットにdiethystilbestrol(DES)カプセルをimplant刺激し、幼若卵巣から顆粒膜細胞を分離するラット顆粒膜細胞の初代培養系を活用した。この卵巣顆粒膜細胞の初代培養においては2種のplastic meshを用いた卵母細胞の単離法も確立した。そしてviableな卵母細胞と卵母細胞・顆粒膜細胞共培養のシステムのなかで、特にMAPキナーゼ:ERK(extracellular signal-regulated kinases)の活性化が卵巣顆粒膜細胞のステロイド合成調節に関わる重要性を明らかにした。MAPKK(MEK)の阻害薬であるU0126によるERK1/2のリン酸化を抑制すると、エストロゲン産生系は亢進するがプロゲステロン産生系は抑制される。MAPK活性がエストロゲン・プロゲステロン産生を異相性に調節しているが、この作用は夾膜細胞由来のBMP-4/BMP-7によるステロイド合成調節と同調しており、BMP-SmadシグナルとMAPKカスケードは機能的にリンクしていることが明らかとなった。またBMP-6と異なり、BMP-7はFSH刺激による顆粒膜細胞でのERKリン酸化を抑制することが示された。一方で、BMP-SmadシグナルはFSHおよび卵母細胞の存在によって増強されることも明らかとなり、このような顆粒膜細胞と卵母細胞間でのFSH-ERKシグナルと内因性BMPシステムの連携により卵胞ステロイド調節機構が機能していることが証明された。
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