研究概要 |
われわれは、骨髄間葉系幹細胞に近い性格をもつと考えられる骨髄細胞にAd4BP/SF-1の遺伝子導入を行い、ACTH反応性のステロイド産生細胞の誘導に成功した(Gondo et al.Genes Cells.9:1239-1247,2004)。また、commercial baseで販売されているヒトの骨髄間葉系幹細胞を用いて同様な実験を行ったところ、マウス同様、各種ステロイド合成酵素の発現誘導ならびにステロイド産生の誘導が認められた(Tanaka et al.J Mol Endocrinol.39:343-350,2007)。Ad4BP/SF-1遺伝子導入によるステロイド産生細胞の誘導の分子メカニズムを解明するために、DNAチップを用いて解析した結果、ヒトならびにマウスでともに発現誘導の認められる遺伝子2つに注目した(それぞれ遺伝子X、遺伝子Yと呼ぶことにする)。これらの遺伝子を、siRNAならびにshRNAを用いたRNAi法により、その発現をノックダウンすることにより、Ad4BP/SF-1遺伝子導入によるステロイド産生細胞への誘導が障害されることが見出された。遺伝子Xは既知の可溶性因子であり、一方遺伝子Yは機能が全く不明な未知の因子である。 可溶性因子であるXの精製物を骨髄間葉系幹細胞類似の細胞に添加する実験を行ったが、ステロイド産生への影響は全く認められなかった。Xと複合体を形成するpartnerの精製物をXと一緒に添加することも試みたが結果は変わらなかった。一方、機能が全く不明なYに対して抗体の作成を試み、特異性の高い抗体が得られた。 さらに本年度は、骨髄由来のみならず脂肪由来の間葉系幹細胞を用いた検討も行った。骨髄由来のものと同様に、Ad4BP/SF-1の遺伝子導入によりステロイド産生細胞の誘導が認められたが、Ad4BP/SF-1の発現量により、また骨髄由来か脂肪由来かにより、ステロイド産生のプロファイルが異なることがわかった。これは副腎型もしくは性腺型のステロイド産生の分離への第一歩と考えている。
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