アロマターゼやステロイドサルファターゼは種々の末梢組織へのエストロゲン供給を通して生殖生理機能のみならず、骨、血管、脳など種々の組織で重要な役割を担っている。従来、エストロゲン産生異常を伴う病態の多くの解析は主にmRNA転写レベルで行われてきたが、組織でのアロマターゼやステロイドサルファターゼの発現量(mRNA量)と活性値が必ずしも相関しないこと、また種々の因子により細胞内分解が亢進・抑制がかかることを我々は見出している。 そこで本研究では翻訳後修飾の可能性を改めて見直し、その分子機構・役割について解析する。既に、エストロゲン産生酵素であるアロマターゼ及びステロイドサルファターゼのmRNAレベルと活性レベルは、ある種の生理条件下、病的状態下において発現に解離が見られることを確認している。そこで、細胞内シグナル伝達系を動かすような種々の条件下、エストロゲン代謝酵素のmRNAレベル、活性レベル、タンパク質レベルを各々定量的RT-PCR、HPLCによる酵素活性測定、特異的抗体を使用したウエスタンブロット解析・ELISAによる定量を行った。活性レベルの測定よりリン酸化などによる翻訳後修飾の可能性、タンパク質レベルの測定により細胞内分解速度(代謝回転速度)の翻訳後修飾の可能性が示唆された。そこで翻訳後修飾の関与が疑われるシグナル伝達系や分解調節機構については、構成する修飾酵素・分解酵素に対する特異的阻害剤を投与し、培養細胞レベルでエストロゲン産生酵素のmRNAレベル、活性レベル、タンパク質レベルを定量してみた。その結果、転写レベルの酵素誘導と同時にユビキチン化による分解調節機構も機能していることが示唆された。このユビキチン化・タンパク質分解は膜構造依存性に機能しており、ユニークなユビキチンリガーゼが関与している可能性もあるので、詳細な解析を進め、その単離・特徴づけを目指している。
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