研究概要 |
造血幹細胞の増殖と生存に必須の因子である転写因子GATA-2の解析中心に研究を行い、18年度には、本因子がユビキチン・プロテアソーム系による分解を受け、その発現はS/G2期に高くM期に分解されるという細胞周期特異的性を示すことを明らかにし、GATA-2がサイクリン/Cdkによるリン酸化を受け、このリン酸化が本因子の発現安定の制御に関わることを報告した(Koga et al. Blood 2007)。19年度にはChIP法による本因子の標的結合配列の探索を行い、G1-S期移行に関わる重要な制御因子であるサイクリンE1,サイクリンD2の遺伝子領域に本因子が結合することを見いだした。サイトカイン依存性細胞株による細胞周期同調培養系を構築して検討を行い、GATA-2の発現、およびその標的遺伝子への結合がG1後期からS移行期に上昇し、S期に低下することを見いだした。ルシフェラーゼレポーターアッセイおよび、遺伝子ノックアウトマウスの解析より、GATA-2はサイクリンE1,D2遺伝子の転写を活性化することが明らかになり、これら遺伝子がGATA-2の重要な標的遺伝子であることが示された(投稿準備中)。さらに、GATA-2の標的遺伝子への細胞周期特異的な結合はCdk阻害剤の添加により大きく変動し、サイクリン/Cdkによるリン酸化が本因子のDNA結合を制御している可能性が示唆された。これらの結果は、GATA-2とサイクリン/Cdk系による双方向性の制御がお互いの発現と活性を制御することを示し、造血幹細胞などGATA-2の発現する細胞の増殖特性を規定する可能性を示すものである。
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