研究課題
基盤研究(C)
ヘムは生体内において多くの遺伝子の発現を制御し、赤芽球分化に関与することが知られているがその詳細なメカニズムは不明である。そこで申請者らは、赤芽球分化におけるヘムの転写制御機構及び赤血球形質発現における意義を明らかにするために、マウスES細胞由来の野生型赤芽球と、ヘム合成系の律速段階酵素である赤血球型δ-アミノレブリン酸合成酵素(ALAS2)欠損マウスES細胞由来のヘム欠損赤芽球のそれぞれの遺伝子発現プロファイルをcDNAアレイにより網羅的に解析した。その結果、ヘム制御下にある新規の赤血球関連遺伝子としてUCP2、NuSAP、CNBPと未知の遺伝子(EST1)の4遺伝子を同定した。このうちNuSAPはtランスフェリンレセプター陽性赤芽球に強く発現し、人為的に貧血にしたマウスでの赤芽球で発現の増強が認められたことから、赤血球増殖にかかわっていることが示唆され、従って、ヘムはNuSAPを介し、赤血球造血を制御しているものと考えられた。また、EST1は、ヒストンアセチル化酵素に共通に保存されているAcetyl CoA binding domainを有することが一次構造配列の比較により明らかとなり、新規アセチル化酵素であることが予想された。一般的に、HATはピストンをアセチル化することによりクロマチンの構造変換を促し、転写制御に重要な役割をもつことが知られている。現在のところヘムを介したヒストンアセチル化の制御に関する報告はなく、赤芽球分化におけるHATの意義も不明である。EST1は、ヘムにより転写レベルでの発現が上昇し、またEST1蛋白質複合体を用いたin vitroの解析において遊離ヒストンに対するHAT活性を有している可能性が示唆された。以上より、EST1は赤芽球分化において、その複合体を介して赤血球特異的遺伝子の転写をエピジェネティックに制御しているものと予想された。
すべて 2007 2006
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件)
British Journal of Haematology. 135
ページ: 583-590
British Journal of Haematology 135
ページ: 538-590