我々は、Insertion Mutagenesisにより偶然血小板増加を来たしたマウスを発見した。そして、トランスジーンがc-Mybの転写開始点約80kb上流に挿入され、巨核球および赤芽球共通前駆細胞分画レベルでc-Mybの発現が低下し、このc-Myb発現低下が血小板増加の原因であることを明らかにしてきた。さらに、巨核球造血にかかわるc-Mybの標的遺伝子探索を目的に、巨核球・赤芽球共通前駆細胞分画からRNAを出しマイクロアレイを行った。2つの標的遺伝子候補について、c-Mybとの結合(クロマチン免疫沈降法およびゲルシフトアッセイ)、c-Mybによるレポータージーン活性の抑制を確認した。 標的遺伝子候補の生物学的意義を検証するために、2つの標的遺伝子候補のうち、特にCD9に注目し遺伝子改変マウスを用いて、個体レベルでの解析を行った。 CD9遺伝子破壊(KO)マウスの末梢血血小板数は野生型マウスと同等であった。しかし、DNA合成阻害剤である5-FUを投与し骨髄抑制をかけると、CD9KOマウスは野生型マウスに比べ末梢血血小板数の回復が遅延していた。さらに、CD9KOマウスの骨髄巨核球を解析するとproplatelet formationが著しく障害されていることがわかった。 これまでの結果から、c-MybはCD9を負に制御しており、通常状態ではc-MybがCD9を抑制しているものの、c-Mybの発現が低下するとCD9の発現が上昇し、巨核球・血小板造血が充進することがわかった。さらに、c-Myb-CD9系はトロンボポエチンによる巨核球・血小板産生系と異なり、非常時の血小板産生の備えであると考えられた。
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