1.ヒトリンパ増殖性疾患モデルにおけるr選択とK選択の作用:Epstein-Barrウイルス(EBV)感染リンパ芽球様細胞株(LCL)にEBV-oriPを有するEBV-based vector pMEEBを用いて各種リンパ腫関連遺伝子を電気穿孔法で導入した。hTERT発現plasmidは長期間の継代培養で失われず、優位性を獲得した。一方、c-mycとp53変異体などその他のリンパ関連遺伝子は優位性を獲得することができず、control vector同様に培養中から消失した。また、IgH CDRIIIのclonality解析や染色体分析から、EBV-LCL培養系ではclonal evolutionが早期に生じており、この実験系のクローン選択モデルとしての有用性が示唆された。 2.造血器腫瘍における14-3-3σ遺伝子発現解析:129例の造血器腫瘍患者の臨床検体ならびに血液細胞株47株を用いてreal-time RT-PCR法で14-3-3σ遺伝子の発現を解析したところ、成熟リンパ系腫瘍において高発現例が多数存在することを見出した。ウエスタン解析ではmRNAレベルと同等の蛋白発現が確認されたが、14-3-3σ遺伝子のCpGアイランドのメチル化状態との関連性は認められなかった。発現機序は不明だが、成熟リンパ系腫瘍の一部の腫瘍化に14-3-3σ遺伝子発現が関与していることが示唆された。血液細胞株に14-3-3σ遺伝子発現を導入し、その作用を検討したところ、細胞周期停止が誘導されることはなく高発現が許容されることが判明した。高発現の作用・臨床的意義について、今後のさらなる検討が必要である。
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