研究概要 |
慢性骨髄性白血病(CML)での、BCR/ABL異常チロシンキナーゼからの恒常的シグナル活性化機構と、抗癌剤耐性機構との関連につき検討を行った。まず、BCR/ABLによって恒常的に活性化を受けるシグナル伝達機構として、Rap1/B-Raf/MEK/Erk経路の存在を見いだし、この経路がCML細胞の増殖誘導とアポトーシス抑制に重要な役割をはたし、この経路をSPA-1により抑制することで、分子標的薬imatinib に対するCML細胞の感受性が亢進することを見いだした(Jin A et al.Oncogene 25:4332-4340,2006)。さらに、CML細胞ではrottlerinその他のミトコンドリア脱共役剤によりミトコンドリア膜電位を一過性に減少させると、imatinibによるミトコンドリア外膜透過性亢進とcytochrome C放出およびcaspase 3や9の活性化が相乗的に誘導され、imatinibによるアポトーシスが相乗的に増加することを見いだした(Kurosu T et al.Oncogene印刷中)。さらに、CMLや急性前骨髄球性白血病細胞において抗白血病薬亜ヒ酸は、活性酸素種の増加を介してAsklの活性化やp38およびJNKの活性化をもたらし、Ask1の活性化はG2期での細胞周期停止に関与するが、アポトーシス誘導にはむしろ抑制的に機能することを見いだしている(Yan W et al.BBRC 355:1038-1044,2007)。
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