研究概要 |
再生不良性貧血(再不貧)は原因不明の症候群であるが,実際には約7割の患者がATGとシクロスポリンの併用療法によって改善することから,多くの例の発症に免疫病態が関与していると考えられている。しかし,このような免疫病態を反映する良いマーカーが確立されていないため,再不貧と診断された骨髄移植適応のない患者に対しては無条件に免疫抑制療法が行われているのが実情である。我々がこれまでに提唱してきたPNH型血球の微少な増加は,免疫抑制療法に対する高反応性を示唆する重要な予測因子の一つである。しかし,このマーカーを持たない例でも約4割は改善することから,これのみでは不十分である。最近我々は,免疫病態の新たなマーカーとして抗DRS-1抗体や抗モエシン抗体を見出した。再不貧患者の治療前の血液について,これら三つのマーカーの有無を検索し,免疫抑制療法の共通プロトコールによる治療反応性とこれらのマーカーとの関係を前方視的に観察することにより,免疫抑制療法に対する反応性の予測方法の確立を目指す。平成18年度より研究分担者である中尾を試験責任者として,「成人再生不良性貧血における免疫病態マーカーの意義を明らかにするための多施設共同前方視的臨床試験」を実施している。本試験への参加に文書で同意が得られた患者より検体を収集した。PNH型血球は抗CD11bモノクローナル抗体(赤血球に対しては抗glycophorin-A抗体)とCD55およびCD59の各モノクローナル抗体を同時に用いたtwo-colorの高感度フローサイトメトリ法により検出した。抗DRS-1抗体および抗モエシン抗体はELISA法によって検出した。本臨床試験には全国で既に32施設が施設IRBの承認を得ている。また,これまでに45例の登録を得ている。来年度も引き続き症例数を増やし解析を続ける予定である。(777文字)
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