再生不良性貧血(再不貧)は末梢血の血球減少と骨髄の低形成を特徴とする原因不明の症候群であるが、約7割の患者がATGとシクロスポリンの併用療法によって改善することから、多くの例の発症に免疫病態が関与していると考えられている。ところが、このような免疫病態を反映する良いマーカーが確立されていないため、骨髄移植の適応がない再不貧患者に対しては無条件に免疫抑制療法が行われているのが実情である。我々がこれまでに提唱してきたPNH型血球の微少な増加は、免疫抑制療法に対する高反応性を示唆する重要な予測因子の一つである。しかし、このマーカーを持たない例でも約4割は改善することから、これのみでは不十分である。最近我々は、免疫病態の新たなマーカーとして抗DRS-1抗体や抗モエシン抗体を見出した。そこで、再不貧患者の治療前の血液について、これら三つのマーカーの有無を検索し、免疫抑制療法の共通プロトコールによる治療反応性とこれらのマーカーとの関係を前方視的に観察する多施設共同臨床試験を実施した。本試験への参加に文書で同意が得られた患者より検体を収集した。PNH型血球は抗CD11bモノクローナル抗体(赤血球に対しては抗glycophorin-A抗体)とCD55およびCD59の各モノクローナル抗体を同時に用いたtwo-colorの高感度フローサイトメトリ法により検出した。抗DRS-1抗体および抗モエシン抗体はELISA法によって検出した。本臨床試験には47施設から99例の登録があった。男女比は42:57。年齢の中央値は59才(16才〜75才)。PNH型血球陽性率は74%であった。重症度別陽性率はstage 3が89%、stage 4が74%、stage 5が53%であった。一方、53例の検体を用いて自己抗体を調べたところ、抗DRS-1抗体は25%、抗モエシン抗体は19%が陽性であった。
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