研究課題
基盤研究(C)
マウスに拘束ストレス法を負荷し、向血栓性遺伝子PAI-1の発現を解析した。拘束ストレス負荷2時間後に早くも血中PAI-1抗原量および腎臓、副腎、脂肪組織などでのPAI-1 mRNA発現量が有意に増加した。ストレス負荷20時間後には血中PAI-1抗原量のさらなる顕著な上昇を認め、組織でのPAI-1 mRNA発現量も肝臓、大動脈、副腎、脂肪組織にて著明に増加した。in situ hybridization法による解析では、拘束ストレス負荷により肝細胞、腎尿細管上皮細胞、傍大動脈交感神経節細胞、脂肪細胞、副腎髄質内の腺細胞などにおいてPAI-1 mRNAシグナルの増強を認めたが、脂肪組織(細胞)におけるPAI-1 mRNAシグナルの増強がもっとも顕著であった。以上より、心因性ストレスによって種々の臓器で向血栓遺伝子PAI-1の発現が増強することが明らかとなった。一方、心筋梗塞後慢性期のマウス心臓における間質線維化病変の進展とPAI-1発現との関連について検討した。マウスの左冠状動脈を結紮することによって部分的な心筋梗塞を起こさせ、2〜4週後の慢性期に、不全心の生理機能とPAI-1の発現、病理組織学的変化について解析を行った。Shamマウスと比較して心筋梗塞後マウスでは、血中PAI-1値の有意な上昇と心臓由来のPAI-1 mRNAの顕著な発現亢進を認めた。in situ hybridization法により、このPAI-1 mRNAの発現増強は不全心での梗塞巣周囲の心筋細胞、血管平滑筋細胞、肥満細胞等に由来することが明らかとなった。また心筋梗塞後マウスでは、梗塞巣周囲、非梗塞域の血管周囲および心内膜側に明らかな線維性変化の進展を認めた。以上よりPAI-1は、心臓において創傷治癒、リモデリングの過程で線維化病変の制御を介して重要な役割を果たしていると考えられた。
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