研究概要 |
平成18年度の研究において,骨髄に存在する造血幹細胞は四塩化炭素による慢性肝障害時には,肝星細胞に分化しうることを明らかにした。この結果をまとめた論文はBlood誌(Blood2008;111:2427-2435)に受理された。 単一細胞移植法を用いて造血幹細胞が肝星細胞に分化する事は証明できたが,その分化経路や機序については全くのブラックボックスである。研究代表者は造血幹細胞と腎糸球体メサンギウム細胞の関連を研究する過程で,造血細胞系列の中で特に骨髄球系細胞がメサンギウム細胞に分化する能力を有することを発見していた。そこで,平成19年度は,肝星細胞への分化においてもメサンギウム細胞の場合と同様に骨髄球系細胞が分化能力を有するのかを検討した。まず,骨髄球系細胞の中でもその関与が最も期待される単球に着目して研究を開始した。(1)EGFPマウスから分離培養した単球、マクロファージを肝傷害マウスに移植する実験と(2)EGFP細胞を移植した肝傷害マウスから単球除去を行う実験を計画した。(1)の実験では,まず,EGFPマウスから分離したlineage陰性細胞をSCF・M-CSF存在下で培養して単球、マクロファージを準備し,肝傷害マウスに移植した。対象とした全骨髄細胞を移植した場合とほぼ同頻度で肝臓内にEGFP陽性細胞を検出した。現在,EGFP陽性細胞がKupffer細胞,肝星細胞のいずれなのか検討中である。(2)の実験では,単球除去目的にGadolinium chloride(GC)を週1回3週間静脈注射したが,末梢血および腹腔内の単球、マクロファージ数は減少しなかった。ところが,末梢血中のB細胞数は増加し,著明な脾臓の腫大が認められた。GCにλ-carrageenanを併用して末梢血から単球除去を行う方法を検討中である。
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