研究概要 |
【新規分指標的抗血小板薬、抗腫瘍薬の開発】 インテグリンαIIbβ3の活性化に必要な、talinとαIIbβ3との結合を阻害するペプチドの合成に成功した。N端のパルミトイル基を細胞膜にとどまらせたtalin側のペプチドは、トロンビン受容体活性化ペプチド(PAR1-TRAP, PAR4-AP)のいずれの刺激においても血小板凝集やリガンド類似抗体であるPAC1の結合を阻害した。インテグリンβ3側のペプチドでも同様に血小板機能を阻害した。これらのペプチドは血小板上のインテグリンの発現量や顆粒の放出能に影響を与えなかった。コントロールとして用いた、アラニン置換のペプチドやスクランブル配列のペプチドでは、血小板機能を阻害しなかった。なお、αIIbβ3の活性化を配列特異的に抑制したこれらのペプチドが、血小板内でtalinとインテグリンとの結合を阻害することも確認できた(未発表データ)。 【インテグリン活性化シグナルの解析】 PAR1-TRAPやPAR4-APで刺激したヒト血小板において、talinがインテグリンβ鎖と結合することを、共免疫沈降法で証明することに成功した。さらにインテグリン結合タンパクの一つであるα-actininが、アゴニストからのinside-outシグナルによって瞬時にインテグリンから離れるという新たな知見を得た。しかもαIIbβ3からのα-actininの解離にはα-actininの脱リン酸化が関与しており、それを担うphosphataseを同定した(未発表データ)。また、PAR1,PAR_4やP2Y_<12>-ADPレセプターからのシグナルには、Vasodilater-stimulated phosphoproteinやα-actininのリン酸化が関与し、αIIbβ3を可逆的に活性化することも明らかにした。
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