研究概要 |
【新規分指標的抗血小板薬、抗腫瘍薬の開発】 インテグリンαIIbβ3の活性化に必要な、talinとαIIbβ3との結合を阻害するペプチドの合成に成功した(ITGB3pal-11R, TLN1pal-8R)。N端のパルミトイル基を細胞膜にとどまらせたペプチドは、トロンビン受容体(PAR1, PAR4)のいずれの刺激においても血小板機能を阻害した。これらのペプチドは血小板上のインテグリンの発現量や顆粒の放出能に影響を与えなかった。コントロールとして用いた、アラニン置換のペプチドやスクランブル配列のペプチドでは、血小板機能を阻害しなかった。これらのペプチドによる血小板凝集能の抑制効果は、洗浄血小板のみならず、platelet rich plasma(PRP)でも認められた。 【インテグリン活性化シグナルの解析】 ヒト血小板において、αIIbβ3のリガンド類似抗体PAC1を用いて経時的なαIIbβ3の活性化速度を評価し、PAR1とPAR4によるαIIbβ3の活性化様式が異なることを明らかとした。さらに、インテグリン結合タンパクの一つであるα-actininが、PARからのinside-outシグナルによって瞬時にインテグリンから離れるという新たな知見を得た。このα-actininの挙動はαIIbβ3の活性化様式と連動していた。次に、ヒト巨核芽球細胞株CMKを用いて、過剰発現したα-actininがαIIbβ3の活性化に及ぼす影響を解析したところ、過剰発現したα-actininはαIIbβ3との親和性を高め、αIIbβ3の活性化を初期段階から抑制した。以上の結果より、α-actininはインテグリンαIIbβ3の活性化のinside-outシグナルに関与し、αIIbβ3の非活性化状態を維持する分子の一つであることが示唆された。
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