研究課題/領域番号 |
18591059
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
江副 幸子 大阪大学, 医学部附属病院, 特任助手(常勤) (90379173)
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研究分担者 |
金倉 譲 大阪大学, 医学系研究科, 教授 (20177489)
水木 満佐央 大阪大学, 医学部附属病院, 助教授 (80283761)
織谷 健司 大阪大学, 医学系研究科, 助手 (70324762)
柴山 浩彦 大阪大学, 医学系研究科, 助手 (60346202)
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キーワード | 造血幹細胞 / 未分化性 / SIRT1 / 活性酸素 / PI3K / p16INK4a / p19Af |
研究概要 |
再生医療が進む中、幹細胞の動態を解明することが急務とされている。近年、造血幹細胞についても増殖・分化の分子機構について多くの報告がなされている。しかし、造血幹細胞が骨髄の微小環境の中でどのようにして未分化な状態を維持しているかについてはいまだ明らかにされていない。我々はエネルギー代謝という観点から造血幹細胞の維持機構を解明するためにエネルギーセンサーとして働くSIRT1という分子に着目し、造血幹細胞におけるSIRT1の機能について明らかにしてきた。 SIRT11の阻害剤であるNicotinamide(NA)をマウスの骨髄由来Lin-Sca-1+c-Kit+細胞培養液に添加すると添加しない場合よりKSL細胞が著明に減少した。また、KSL細胞にSIRT1のSiRNAを加えることによりNA添加の場合と同様の効果が得られた。さらにこれらの細胞を用いてコロニーアッセイを行ったところNA添加あるいはSiRNA導入細胞ではコロニー形成能が低下していた。これらのことよりSIRT1は造血幹細胞の分化を抑制していると考えられた。 次にSIRT1が造血幹細胞の分化を抑制する機構について解析した。 NA添加の際、CDKinhibitor p16INK4a, p19Arfの発現が誘導された。また、細胞内の活性酸素(ROS)が蓄積しており、ROSを消去するN-Acetylcystaeine(NAC)を添加することによりNAによるROSの蓄積が解除され、同時に分化促進作用も解除された。また、MAPK阻害剤はNAによる分化の促進には影響せず、PI3K阻害剤は分化を抑制したことからSIRT1による分化の抑制にはPI3Kおよびその下流因子が関与していると考えられた。また、SIRT1のアセチル化の標的であるp53の阻害剤添加によりNAによる分化促進は影響を受けなかった。P53のKOマウス由来骨髄KSL細胞はWTのKSLと同様にNAにより分化が促進した。以上よりSIRT1による造血幹・前駆細胞の分化抑制作用にはp16、p19、ROS、PI3Kが重要な役割を担っており、MAPK、P53は関与していないと考えられた。
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