研究概要 |
カロリーセンサーとして働くSir2の哺乳類ホモローグSIRT1が造血細胞の増殖、分化、agingにおいてどのように機能しているかを解析した。SIRT1の特異的阻害剤であるnicotinamide(NA)をマウスの造血幹・前駆細胞(マウス骨髄単核球細胞由来Lin(-)、Scal(+)、c-kit(+)細胞)に作用させ、SIRT1の機能解析を行い、SIRT1はサイトカイン非存在下での造血幹・前駆細胞のアポトーシスを阻害していること、すべてのlineageへの造血細胞の分化を阻害していることを示した。 NAによりSIRT1の機能を抑制した造血幹細胞において造血細胞の増殖・分化を制御する因子の発現を解析した。KSL細胞をSCF, TPO, IL-6, FL3L存在下で培養する際に、NAを添加したところ、E2Fの発現は軽度低下し、P16INK4a, P19Arfの発現が増加した。造血幹細胞において活性酸素種ROSの蓄積がp16の発現を誘導することが報告されている。培養の際に、NA単独あるいはそれに加えて抗酸化剤N-acetyl Cysteine(NAC)を添加した。REDOX sensor redCC1の取り込みによりROSの蓄積を検討したところ、NA添加によりROSの蓄積を認めたが、NA+NACを添加した場合にはROSはCTLと同程度まで消去されていた。また、Lin-Sca-lの細胞分画はNA添加により減少したが、NA+NAC添加時には、コントロールの培養と同程度まで回復していた。このことよりNAによる分化の促進はROSの蓄積を介するものと考えられた。以上よりSIRT1はp16INK4aやp19Arfの発現増強とROSの消去を介し、造血幹細胞の未分化性の維持に関与していると考えられた。
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