研究概要 |
1)GPI欠損造血幹細胞が良性腫瘍性の増殖を起こす要因の解明 (分担者 木下タロウ) 12番染色体の転座を持つ2症例の解析により、HMGA2の異常発現がGPI欠損細胞の増殖に関与していることが強く示唆されたので、染色体異常をもたないPNH患者においても同様の機序が働いているか、検討した。HMGA2の発現を再現よく解析するためにサンプルの輸送方法、RNAの抽出方法、定量RT-PCRの方法を確立した。RNAの安定化剤が入っているPaxgene採血管で末梢血を採取し全血からRNAを抽出する方法で定量RT-PCRを行ったところ、前述の染色体転座をもつ患者の末梢血においても、正常人に比べて有意にHMGA2の発現の亢進が検出できたので、この方法で他の患者の末梢血及び骨髄における解析を行う予定である。また4人のPNH患者のGPI欠損顆粒球においてHMGA2遺伝子の変異を解析したところ、エクソン3,4,とその周辺、3'UTRを含めたエクソン5に変異はみられなかった。 2)刺激に対するGPIアンカー型蛋白の発現の制御 (分担者 村上良子) 遺伝性のGPI欠損症の2家系では、PIG-Mのプロモーター領域の1塩基の変異によりプロモーター活性が著しく低下していた。この部位は転写因子Sp1の結合サイトで変異により結合が阻害されるために遺伝子の転写が著しく低下することがわかった。またこの部位のヒストンのアセチル化が変異によって低下しており、HDAC阻害薬であるNa butyrateで投与により、in vitro、in vivoにおいてPIG-Mの発現が戻り、GPIアンカー型蛋白の発現も回復した。この部位はマウスでもよく保存されており、同様の変異をいれるとそのプロモーター活性が著しく低下した。マウスにおいても患者の病態が再現されるかということと、PIG-Mの発現がどのように個体発生の各段階で調節されているかしらべるために、この変異をもつノックインマウスの作製し、現在解析中である。
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