宿主抗原提示細胞からのアロ抗原提示によってドナーリンパ球の急漱な増抑と、それに続く体内でのサイトカインの急激な上昇により、移植片対宿主病(GVHD)が発症する。GVL効果を保持したGVHD制御には、この急激なドナーリンパ球の増殖を抑えることが重要であると考えられる。我々は、リンパ球が減少したSCIDあるいは放射線後のマウスの体内でホメオスターシス増殖したLymphopenia induced proliferation(LIP)T細胞のin vitroでの特性を検討した。LIP T細胞は、フローサイトメトリーでの解析の結果、CD44 highのmemory T細胞の表面抗原マーカーを示し、アロ標的細胞に対するCTL活性は緋持されており、GVL効果が保持されていると考えられた。一方、LIP T細胞は、アロ刺撒による細胞増殖能が抑制されていることがリンパ球混合試験で明らかとなった。従って、LIP T細胞は、体内においても宿主抗原提示細胞からのアロ抗原捉示によるリンパ球の急激な増殖が抑えられていると仮定し実験を行った。結果、マウスin vivoでLIP T細胞は、増殖が抑えられサイトカイン鍾生が低く、GVHD誘導能が低いことが明らかとなった。Regulatory T細胞も、リンパ球が減少したSCIDあるいは放射線後のマウスの体内でホメオスターシス増殖したLIP T細胞のなかに存在すると考えられるが、定常状態のマウスとCD25+CD4+陽性細胞の比率に有意差は無かった。LIP T細胞からCD25+CD4+陽性細胞を除去したT細胞で、同様にGVHD誘導能の実験を施行したところ、再びGVHD誘導能が低いことが明らかなり、LIP T細胞によるGVHD制御はRegulatorv T細胞のよるものではなく、増加したmemory様のT細胞によるためと考えられた。実際に、LIP T細胞からCD44 highとCD44 lowの分画に分けた喝合、後者にくらべ前者にGVHD制御能があることが明らかとなった。以上から、LIP T細胞は、GVL効果を保持したGVHD制御につながると考えられた。
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