研究概要 |
本年度は以下のとおり実施した。 1. CML患者臨床サンプルを用いた解析:細胞遺伝学的効果は初発例晩期例ともに、12ヶ月でCCyRが約90%であった。RQ-PCRにて、BCR-ABL mRNA発現を調べた。12ヶ月でMMRが初発例で64%、晩期例で50%であった。経時的に見るとBCR-ABL mRNAの減少は三相性を示し、好中球FISHの減少とパラレルであった。多くの例では投与開始2週目でBCR-ABL mRNAは上昇した。、ABL遺伝子変異検出は現在まで調べたCML約30例では変異は見つかっていない。 2.イマチニブ感受性株と耐性株の析:イマチニブ感受性株MYLと抵抗性亜株MYL-Rを樹立した。両細胞株ともABL遺伝子変異、BCR-ABLの遺伝子増幅及び発現亢進は認めなかった。イマチニブ添加によりBCR-ABLとCrkLのリン酸化は両細胞株とも同程度に抑制され、MYL-Rにおけるイマチニブ耐性機序はBCR-ABL非依存性であった。MYL-RではLynの高発現に伴うLyn蛋白のリン酸化亢進を認め、JNK、ERK、STAT5蛋白のリン酸化亢進も認めた。MYL-RにPP2、Zoledronic acidを添加すると増殖が抑制された。MYL-Rに対するLynの発現抑制実験では細胞増殖抑制、アポトーシス誘導、イマチニブ感受性の部分的回復を認めたことから、耐性化にLynが関与していることが考えられた。MYL-RではIFNα、Zoledronic acid、PP2、CGP76030、SCH66336、FK228等の薬剤はイマチニブとの併用により増殖抑制効果が増強した。 このようなデータの結果を踏まえ最終年度となる来年度は、臨床症例をさらに増やし、また細胞株実験でも、BCR-ABL非依存性耐性関与が予想される分子Lyn、Bim, Bach2、Bcl-2等の発現の検討をさらに進めたい。
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