1.CML患者臨床サンプルを用いた解析:計142例の症例(初発例は76例)における臨床効果と、遺伝子発現を調べた。K-M法解析では、細胞遺伝学的効果は初発例で、60ケ月でCCyRが94%であった。RQ-PCRにて、BCR-ABL mRNA発現を調べた。60ケ月でMMRが初発例で90%、CMRは(まだ途中であるが)35%であった。初期6ケ月間の平均投与量別に解析すると400mg未満では成績が有意に低く、500mg以上群では0コピー達成率が400-500mg群より高かった。ABL遺伝子変異検出は42例まで増やして調べたが、変異はPh陽性ALLの1例のみであり慢性期患者ではABL変異は少ないと考える。BACH2遺伝子発現はイマチニブ治療中の患者群では上昇していた。 2.イマチニブ感受性株と耐性株の解析:イマチニブ感受性株MYLと抵抗性亜株MYL-Rの解析を継続した。Lynに対するsiRNA導入実験では、MYLでは変化がなかったのに対してMYL-Rでは細胞増殖抑制、アポトーシス誘導、イマチニブ感受性の部分的回復を認めたことから、耐性化にLynが関与していることが考えられた。さらにBimの発現とリン酸化を検討したBimはMYL-Rでは発現およびリン酸化が亢進していた。新規TKIであるダサチニブは、MYL-Rのリン酸化BCR-ABLを抑制し、細胞増殖も抑制した。これらのことから、MYL-Rにおけるイマチニブ耐性はダサチニブで克服できる可能性を示した。さらに新規TKI ABT-737はMYLを含むCML細胞株に対して増殖抑制効果を示した。
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