小胞体ストレスは、蛋白質の構造異常によって引き起こされる細胞内ストレスである。最近、急速に小胞体ストレスの分子機構の解明が進み、このストレス蛋白の生理的機能が明らかになりつつある。アルツハイマー病やポリグルタミン病などの神経変性疾患にこのストレス蛋白が大きく関与していることが明らかにされている。しかしながら、悪性腫瘍においてこの小胞体ストレス蛋白がどの様に関与しているのか、未だ明らかになっていない。小胞体が種々の蛋白の品質管理に果たしている機能を考慮すると、腫瘍細胞が自律的に増殖し、浸潤していく機能に、分泌蛋白や膜蛋白の合成は必要であり、小胞体には過剰な負荷がかかっていることが予想される。また腫瘍細胞は自律的に増殖しているが故に、低酸素状態や低栄養状態下に暴露され、このような状況下は蛋白質の折り畳み(folding)に影響を及ぼし、そのため細胞は小胞体ストレス下にあることが推測される。そこで我々は血液悪性腫瘍における小胞体ストレス応答蛋白の機能について解析する。我々は、急性白血病や多発性骨髄腫患者の腫瘍細胞からRNAを抽出し、RT-PCR(定量的PCR)を行い、小胞体ストレスに関わる転写因子であるXBP-1、スプライシングを受けた活性型XBP-1、EDEM、CHOPなどの小胞体ストレス応答遺伝子のmRNA発現が亢進していることを確認した。代表的な造血器悪性腫瘍癌遺伝子であるBcr-Ab1遺伝子を発現した細胞株を用いてさらに解析中である。
|