多発性骨髄腫は現在も難治性の造血器腫瘍であり、新しい治療戦略の開発が求められている。本研究では、骨髄腫細胞に特異的に高発現しているHM1.24/BST2(CD317)に着目し、本分子に対する新規モノクローナル抗体(b-76-8)の治療への応用の可能性について研究を進めた。平成18年度においては、b-76-8抗体が骨髄腫細胞に特異的に結合し、インターナライズ活性を有することを明らかにした。さらに、細胞毒であるメイタンシン(DM1)を結合させたb-76-8-DM1抗体を作製し、本イムノトキシンがin vitroとin vivoにおいて優れた抗腫瘍効果を発揮することを明らかにした。本年度は、b-76-8抗体のインターナライズ活性の作用機構について解析を加えた。蛍光標識したb-76-8抗体の細胞内局在について共焦点レーザー顕微鏡で観察したところ、b-76-8抗体は細胞内に取り込まれた後、速やかにトランスゴルジ網に集積することを見出した。また、このb-76-8抗体の細胞内局在パターンはtransferrinの局在パターンと一致したことから、receptor-mediated endocytosisにより骨髄腫細胞内に取り込まれることが明らかとなった。以上の結果より、b-76-8抗体は結合物質を特異的に骨髄腫細胞内に伝達させる機能を有しているものと考えられ、HM1.24/BST2(CD317)は多発性骨髄腫に対する新しいターゲティング療法の標的分子として重要である可能性が示唆された。
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