DNAメチル化などのエピジェネティックな異常は、DNAの一次構造の変化を起こすことなく、遺伝子情報を制御するメカニズムとして研究の重要性が認識されている。TGF-βスーパーファミリーに属するBMPはリンパ球の分化、増殖抑制、アポトーシスに関与する。その中でもプロモーター領域にCpGを多く含むBMP-6遺伝子についてメチル化解析をリンパ腫症例で行った。メチル化はCOBRA法およびBisulfite sequencing法により、遺伝子発現はRT-PCR法とWestern blot法により解析した。さらに、そのメチル化がどのように病態形成に関連し、患者の予後を規定する因子になり得るかを検討した。 悪性度の高いリンパ腫、特にびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)やバーキットリンパ腫でBMP-6遺伝子のプロモーター領域でのメチル化およびそれに伴う遺伝子発現の不活化が高率に認められた。一方、健康人末梢血単核球、反応性リンパ節組織ではメチル化はなかった。DLBCL患者をBMP-6メチル化群(n=21)と非メチル化群(n=14)に分け、その予後解析としてdisease-free survival(DFS)とoverall survival (OS)をKaplan-Meier法で検討した。メチル化群でDFS、OSとも有意差をもって不良であった。さらには多変量解析の結果、BMP-6メチル化は、DFS、OSともに独立した予後不良因子であることが判明した。DLBCLにおいて、BMP-6遺伝子メチル化は患者の予後を規定する新規メチル化マーカーであることが示された。(Clincal Cancer Research、13:3528-3535、2007) また上記の遺伝子メチル化研究と併行して、様々な造血器腫瘍の病態解明の研究、例えば、癌遺伝子と腫瘍増殖のメカニズム、新規癌遺伝子の解析などについての研究を行った。
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